高松高等裁判所 昭和55年(ネ)173号
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
一 控訴人訴訟代理人は、「原判決中、控訴人敗訴部分を取り消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人の請求の趣旨の減縮に同意し、被控訴人訴訟代理人は、主文と同旨の判決を求め、その請求の趣旨を、控訴人は被控訴人に対し金一二万〇七二二円及びこれに対する昭和五四年一一月二〇日から支払ずみまで年六分の割合による金員の支払を求める範囲に減縮した。
二 当事者双方の主張及び証拠の関係は、次のとおり変更、訂正、付加するほか、原判決事実摘示中被控訴人と控訴人関係の該当部分のとおりであるから、これを引用する。
1 原判決五枚目表一〇行目の「退職の日」から同一一行目の「二一日」までを「の退職手続完了の日から三〇日を経過した日の翌日である昭和五四年一一月二〇日」と変更する。
2 原判決六枚目裏一二行目に「甲第二号証は退職金支給規定廃止についての告示の写真である。」と加える。
3 原判決七枚目表七行目の「甲号各証」から同八行目の「不知。」までを「甲第一号証及び第三号証の成立並びに同第二号証が被控訴人主張の告示の写真であることは認める。」と訂正する。
4 控訴人は、当審における控訴人代表者本人尋問の結果を援用した。
理由
一 当裁判所も被控訴人の本訴請求は原判決が認容した限度で理由がありその余は理由がないものと判断するが、その理由は、次のとおり訂正、付加するほかは原判決(更正決定を含む。)理由(第四項を除く。)説示のとおりであるからこれを引用する。
1 原判決七枚目表一一行目の「甲第一」から同一二行目の「第三号証」までを「甲第一号証及び第三号証」と改める。
2 原判決七枚目表末行の「同第一六号証、」の次に「被控訴人主張の告示の写真であることにつき争いのない甲第二号証、」とそう入する。
3 原判決一四枚目表一行目の「本件告」から同五行目の「認められないので」までを「本件告示は、被控訴人の退職金につき、右退職金支給規定によって本来算入されるべき昭和五三年八月一日以降の勤続年数部分を除外して退職金を算定し、その結果右除外された部分の退職金請求権を消滅させる不利益を被控訴人にもたらすにもかかわらず、その代償となる労働条件を何ら提供しないものであり、かつ、右不利益を是認させるような特別の事情も認められないので」と改める。
4 控訴人代表者は当審において、昭和五一年一一月二〇日に締結した労働協約において、従前の賃金体系を変更し、賃金の後払いである退職金制度を廃止し、その代償として退職金に見合う額を毎月支払う賃金の中へ繰り込むこととして、歩合賃金の歩合率などを協定したとか、その変更した賃金体系で退職金制度を廃止したことに合理性があると供述するけれども、昭和五一年一一月二〇日に協定書(賃金に関する労働協約書)を取り交わした際には、それ以降の就労期間を退職金の算定期間に加えないことにつき未だ協定がなされていなかったことは控訴人代表者が当審で自認するところであるほか、右日時以降も昭和五三年七月三一日まで就労した期間は退職金算定の期間に加えてきたのに、翌日以降の就労期間を退職金算定から除外することが合理的処置として首肯できることの主張立証がなく、たとえ昭和五一年一一月の右新協約成立後、同五三年八月一日までの間に、同五二年六月一九日に開催した団体交渉の席上などで、控訴人側から組合に対し、当時のように退職者が毎月のように続出している間は従前どおり新協約成立後の就労期間を退職金算定期間に加えて算出した退職金を支払うが、将来、退職者が続出しなくなった段階で、それ以降の就労期間を退職金算定期間から外す旨事前通告していたとしても、その告知の内容に合理性があるとは到底認められない。
なお、控訴人代表者は当審で、昭和五三年一一月二〇日、新賃金体系の協定書を取り交わした際、控訴人から組合に対し、退職金支給制度を廃止する旨口頭で通告したのに、組合に異議がなかったので、それまで控訴人の内規として存在していた退職金支給規定の廃止についても労働者が同意したと供述するけれども、右退職金支給規定廃止の口頭通告をしたとか、従前の退職金制度を以後の就労に適用しないことを組合ないし労働者が同意したとの供述が措信できないことは、引用する原判決の理由二、末項記載のとおりであって、原審で提出された関係証拠に、当審における控訴人代表者尋問の結果を加えて検討してみても、右の判断は動かず、他にそれを覆えすに足る証拠はない。
二 よって、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないのでこれを棄却し、控訴費用の負担につき、民事訴訟法第九五条、第八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 菊地博 裁判官 滝口功 裁判官 川波利明)